■1. ハイテク企業、ローテク企業。
■2. コマンドZな電卓。
■3. キャラポンな製品。
■4. 他人の感覚で判断できる人、自分の感覚で判断する人。
■5. 自分の感覚でしか判断できない人。
■6. 経営者に求められる感性。
■7. 経営者と企画開発部。
■8. クレーマー、カスタマー。
■9. もっとも強いものづくり。
■10. 既存技術の融合。
■11. 要望のないアンケート。

■ラフィールドの考える「これからの企業と製品」をコラムシリーズとしてお伝えしていきます。
なお、ご意見やご質問がございましたら、お気軽にinfo@lafield.comへお問い合わせください。


■5. 自分の感覚でしか判断できない人。

前回、企画には「他人の感覚で判断できる人」と「自分の感覚で判断する人」がいることをご説明したが、実はもうひとつ別のタイプがある。一般社員のほとんどを占める「自分の感覚でしか判断できない人」だ。この「自分の感覚でしか判断できない人」は、時としてさまざまな弊害をもたらすことがある。場合によっては、優秀な人材さえ失いかねない。今回は、この「自分の感覚でしか判断できない人」についてご説明する。

企画部員以外からの要望提案や企画提案は必要である。なぜなら、情報ソース(出所)は多いに越したことはないからだ。またその中には、製品ユーザーと同じ感覚を持ち合わせている場合もある。社内報奨制度なり一般公募コンペ(競技会)なり、大いに募っていただきたい。ただし、ここで注意しなければならないのは、それらの提案だけで判断するのは危険だと言うことである。つまりそれらは「検証」がなされていないからだ。

営業部などから「問屋AのZ氏が、こうすれば売れると言ってました。」とか、「小売店BのY氏は、この機能が欲しいと言いました。」なんて提案が多く出される。これはこれで情報として非常に重要である。まして、それがクレームだったりしたら早急に対応しなければならない。だが、その情報だけで判断することは危険だ。やはりそれらは「検証」がなされていないからだ。

中小のオーナー企業では、社長自ら製品を企画することが珍しくない。確かに、社長が若い頃はユーザーと社長の感覚が近いため、ユーザーの嗜好をとらえることができていたかも知れない。それはそれでよかったのだが、社長が高齢化したとき、社長の判断だけで企画することは危険だ。すでにユーザーとの感覚がズレていて、やはりそれらは「検証」がなされていないからだ。

----------

これらに共通するのは、その大多数が「自分だけいいと思う提案」であることだ。つまり、「自分の感覚でしか判断できない人」の提案だと言うことである。困ったことに、この「自分の感覚でしか判断できない人」は、自分の好みとユーザーの好みの違いが分からない。自分が好きなら、ユーザーも好きだろうと考えてしまうのだ。だから、そのままで判断することは危険なのだ。

それゆえ、これらの「自分の感覚でしか判断できない人」の提案は、改めて「検証」し直さなければならない。「検証」とは、提案対象のユーザーに本当に必要とされるかを確かめることである。かと言って、提案すべての対象ユーザーを何百人も集めてアンケート調査する訳にはいかない。では、どうやって確かめるか。ここで、企画部員の「他人の感覚で判断できる人」が重要となってくる。

この「他人の感覚で判断できる人」は、日常的に、年代や嗜好の異なる世代の感覚をシュミレーションして企画を作成している。だから、彼らにとってこれらの「自分の感覚でしか判断できない人」の提案を取捨選択することは、実は普段行っていることなのだ。つまり彼らにとってこれらの提案は、常に収集している情報の一部にしか過ぎないのである。事実、これらの提案の多くが、彼らが以前に収集し不採用とした場合が多いのだ。

だったら、始めから企画部員以外からの要望提案や企画提案など必要ないだろうと思われるかも知れないが、情報ソースは多いに越したことはない。社内報奨制度などは、社内を活性化する役割もある。その中で数点でも可能性のある提案が見つかればいいのだ。もちろん、可能性のある提案を最終的に判断するには、対象ユーザーにアンケート調査する必要がある。だがこのアンケート調査、結構くわせものだったりする。未来の予測が難しいのだ。

アンケート調査を実施する時期と、実際に製品を発売するまでには時間差が生じる。春夏物の製品なのに、アンケートは秋だったりするからだ。また、発売時期の流行を予測して企画を作成する訳だが、アンケートの時期にそれを対象ユーザーが好むとは限らない。必然的に結果は低くなる。だから企画部員は、この結果を未来の対象ユーザーの感覚でシュミレーションして補正する。

----------

さて、ここからが本題である。企画部員は、さなざまな情報を収集し、それを対象ユーザーのシュミレーションで取捨選択し、アンケート調査の結果を補正して企画を作成する。ユーザーの要望が凝縮された企画である。だが、ここでとんでもない壁が立ちはだかるのだ。企画会議である。当然、企画会議には社長も含め社内のさまざまな部門が参加することになる。そしてそのほとんどが、「自分の感覚でしか判断できない人」ばかりなのだ。

企画部員は、その企画案がなぜ対象ユーザーに必要とされるか理解してもらえるように、その根拠となるさまざまな資料を提示して説明する。だが大多数は、対象ユーザーの感覚が分からない「自分の感覚でしか判断できない人」だからそれが理解できない。ましてや、自分の感覚で分からないことには拒絶する傾向があるから「こんなの売れる訳ないよー。」などと中傷すら出てくる。自分の好みではないからだ。

前出の社内提案も災いする。「オレの提案の方が売れるのにー。」なんて言い出す。彼らには、何より自分の好みの提案が一番だからだ。さらに、肝心のアンケート調査の結果が低かったりすると、全員で多数決とか、社長の好みで、なんて言うとんでもないことになったりする。こうなると、ある日ごっそり企画部員が去ってしまうことになりかねない。なぜなら、その会社に今以上の伸展を望めないからだ。

だから、企画を評価や決定する人が「自分の感覚でしか判断できない人」であってはいけない。では、どうしたらいいか。もし経営者が「自分の感覚でしか判断できない人」であるなら、有能な「他人の感覚で判断できる人」を側近にすべきだ。もちろん、最終決断は経営者自身となるが、その場合も経営者の好みで判断しないことだ。また会議から中傷を排除し、プラスを引き出すように変えなければならない。これは、経営者自らが社員を説得すべきだ。

----------

これらのカイゼンには、さほど時間もお金もかからない。だが、一度去ってしまった企画部員が戻ることはなく、その損失は計り知れない。まして「他人の感覚で判断できる人」に出会う確立は、非常に少ないのだ。



※後日談---実は、今まで拝見したほとんどの企業で、今回のような「自分の感覚でしか判断できない人」からの中傷が行われている。そして、やっぱり企画部員がまとめて去っている。早くカイゼンしないと・・・。


home.html column6.html