■1. ハイテク企業、ローテク企業。
■2. コマンドZな電卓。
■3. キャラポンな製品。
■4. 他人の感覚で判断できる人、自分の感覚で判断する人。
■5. 自分の感覚でしか判断できない人。
■6. 経営者に求められる感性。
■7. 経営者と企画開発部。
■8. クレーマー、カスタマー。
■9. もっとも強いものづくり。
■10. 既存技術の融合。
■11. 要望のないアンケート。

■ラフィールドの考える「これからの企業と製品」をコラムシリーズとしてお伝えしていきます。
なお、ご意見やご質問がございましたら、お気軽にinfo@lafield.comへお問い合わせください。


■1. ハイテク企業、ローテク企業。

インフォメーションテクノロジー(情報技術)、バイオテクノロジー(生物技術)、ナノテクノロジー(超微細技術)だのと、まるで日本の産業の将来は、英文で綴られるハイテクノロジー(高度先端技術)でなければ罷(まか)り通らないがごとく吹聴されている昨今である。もっとも私自身、何台ものパソコンやらOA機器やらのハイテク機器に囲まれ、一日の大半がパソコン画面と向き合うことに費やされ、これらハイテクなしにはどうにもこうにも仕事にならないのが現状だ。

ところが、これまで日本の高度成長を支えてきた中小企業が今、そのハイテクの波に翻弄(ほんろう)されている。もちろん、大多数の中小企業が未だローテクノロジー(既存技術)の渦中にあるためだ。ローテク中小企業が、安価な賃金と豊富な人材力を盾に躍進するアジアのローテク大国に立ち向かうための選択肢は幾つもない。「ハイテク化するか」「ハイテクに関わるか」である。

しかし、現状はかなり厳しい。ローテク中小企業が、莫大な投資を必要とするハイテクをおいそれとは導入できる訳がなく、また余程の技術を持った企業でない限り、大手のハイテク関連事業に携われないのが実状である。すると、大多数のローテク中小企業の残された選択は、「ハイテクを眺(なが)める」ことになってしまう。もっとも、眺めるだけなら金はかからないが、その代償に幾多のローテク中小企業が倒産の憂き目にあっている。

だけど、ちょっと待って欲しい。ほんとうに、これから生き残るのはハイテクだけだろうか。ローテクに先はないのだろうか。ここで、ある興味深い企業をご紹介する。従業員20名程の、小さな町工場である。主力製品である「液体を小分けする容器」を、40年も前から同じ方法で作り続けている典型的なローテク企業だ。

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以前このメーカーでは、社内の中だけで売れそうと思われる製品を作り、これを流通業者(問屋・小売店)に卸していた。新製品が初期ロット以上に売れる確立は、およそ1割以下。なぜ、製品の売り上げが頭打ちなのか、皆目検討がつかない状態だった。最終ユーザー(消費者)との接点がまるでなかったのだ。

このメーカーの転機は、市場と最終ユーザーの実態を把握することから始まった。自社製品の置かれているショップを隈無く回り、製品と市場のギャップを徹底的に調べた。お客さま相談窓口を開設し、それまで受けたことすらなかった最終ユーザーのクレームを積極的に収集し、製品のモニター調査やアンケート調査を行い、製品と最終ユーザーのギャップを徹底的に調べた。さらに、1年後、数年後に予想されるトレンド情報やデザイン傾向を、やはり徹底的に調べた。

ここで、驚くべき実体が判明した。まず、想定されていたメインユーザーが、20代から10代半ばに移行していた。しかも、これまでの製品が、およそトレンドから外れたものばかりだったのだ。また、製品本体そのものが、使い方しだいでは液漏れを起こし出荷後の不良率も高いことが分った。さらに、元の液体が入った容器(大ビン)のポンプが固定され外せなくなっており、詰め替えすらできなくなっていたのだ。これでは、売れる訳がない。

解決策が分ると、改善にそう多くの年数はかからなかった。その結果、販売額は約4倍、製品シェアは20%台から60%台にアップした。さらに、新製品が初期ロット以上に売れる確立は、5割以上に達した。台湾や中国から安価なコピー品が多数発売されたが、圧倒的な使い勝手の良さとトレンドに合致したデザインの差から、結局それらは国内から淘汰された。しかし、製品そのものの基本技術は、40年も前となんら変わっていない。同じ方法で、同じように生産されている。まさにローテクの極みである。

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ユーザーが、ほんとうに望んでいるのは、ワクワクやドキドキさせてくれる新しいことであったり、生活をより快適にしてくれる便利さや楽しさである。ユーザーは、ハイテクとかローテクとかで選ぶのではない。「ユーザーが今、何を望んでいるか。」ローテクの勝機は、まさにここにある。



※後日談---その後この企業、残念ながら所謂(いわゆる)お家騒動で分裂してしまった。改革を実践したメンバーが去ってしまったのだ。まったく、企業にとって何が落とし穴になるか分った物ではない。


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