■1. ハイテク企業、ローテク企業。
■2. コマンドZな電卓。
■3. キャラポンな製品。
■4. 他人の感覚で判断できる人、自分の感覚で判断する人。
■5. 自分の感覚でしか判断できない人。
■6. 経営者に求められる感性。
■7. 経営者と企画開発部。
■8. クレーマー、カスタマー。
■9. もっとも強いものづくり。
■10. 既存技術の融合。
■11. 要望のないアンケート。

■ラフィールドの考える「これからの企業と製品」をコラムシリーズとしてお伝えしていきます。
なお、ご意見やご質問がございましたら、お気軽にinfo@lafield.comへお問い合わせください。


■10. 既存技術の融合。

「木の利用コンペ(競技会)2003」に入賞したとの連絡をいただいた。コンペを主催しているのは、「協同組合 倭人(わじん)」。奈良県吉野地域(吉野川上流に位置し古来より林業の聖地と言われ日本林業の中心的役割をはたしてきた)の山村活性化に取り組む企業の集まりである。

今回のテーマは、「山から木を安く出す方法」。この地域の山林は地形が急峻(きゅうしゅん:傾斜が急で険しい)であり、それ故に道が少なく、個別の山林面積も小さい。そんな地域の林業収益率をカイゼンする方法のコンペなのだが、事態はかなり深刻である。主業の間伐材生産はヘリコプターによる伐出(ばっしゅつ:木を伐採し林道まで集める)が9割を占めるため、山から木を出すコストが木の販売価格を上回り、山から木が出なくなってきていると言うのだ。

----------

現在、国内の伐出方法は意外と限られている。山林のほとんどでは架線(ケーブル)が使用されているが、吉野地域のように急峻な地形ではヘリコプターに頼らざるを得ない。もちろん林道を開設できるような地形であれば、パワーショベルや運材車などを活用できるが、これは傾斜が穏やかな地域など一部に限られる。そもそも日本は、山林の地形が複雑で狭すぎるのだ。

吉野地域ではかつて、修羅(しゅら:丸太を縦に並べて半円形の溝を作りその中を滑らせる)や木馬(きうま:丸太を並べた搬出路を人力で引くそりに似た道具)および人肩などにより伐出され、市場へは筏(いかだ)が使われた。つまり、すべてを人力で賄(まかな)っていたのである。ところが、戦後の機械化に伴い架線が普及。やがて、更なる合理化や省力化のためヘリコプターが主流となる。ところが、このヘリコプター、輸送手段としては最も燃費が悪く機体の維持費が高価な食わせ物だ。

----------

このテーマの解決すべき課題は、2つのキーワードに絞られる。「低コスト」そして「大量輸送」である。つまり、現在のヘリコプターに替わり、急峻で狭い地形でも「低コスト」で「大量輸送」できる方法を構築すればいい訳だ。だが、そんなうまい方法があるだろうか。そもそも、そんなに簡単に考え付くのなら、とっくに実用化されているはずだ。

まず、他地域では主流な架線の再使用を考えてみる。問題なのは、大量輸送するためには、架線にかかる重量に耐える支柱など、それなりの設備投資がかかってしまうことだ。さらに、個別の山林面積が小さいこの地域では、山の土場(木材を搬出する途中で一時的に集積する所)それぞれに支柱を建てなければならない。これでは、「低コスト」とは程遠い。

ヘリコプターに替わる「低コスト」な空中輸送はないだろうか。すぐに思い浮かぶのは、悲劇の終焉(しゅうえん)をとげた飛行船である。だが、天候の影響を受けやすい飛行船が複雑な地形の山間部に適する訳がない。ましてや、終焉の原因が天候による制御不能の事故だったのだ。だが、「大量輸送」するにはこの上ない。

これら既存技術をそのまま発展させても、この地域のように特殊な地形に適した方法にはなりそうもない。かといって、まったく新しい技術を開発するのでは、コストや開発期間がかかりすぎ実用的とは言えない。では、どうしたらいいか。既存技術をなんとか応用することはできないのだろうか。

----------

じつは、思わぬところに解決策があった。「既存技術の融合」である。つまり、個別では難点があったそれぞれ異なった既存技術が、たがいに融合することでお互いの難点を補った新しい技術となりえたのだ。(詳しい内容は、まだ公式発表されていないため記載することができないが、発表後に再度解説したい。)

昨今、国内の既存技術が、技術革新の名目の元に放棄されようとしている。それは、工業ばかりではなく、農業や林業さらには水産業までにも及んでいる。だが、ほんとうに必要とされる技術は、意外と身近な「既存技術の融合」だったりするのかも知れない。もっとも、その既存技術すら廃(すた)れてしまっては元も子もないが・・・。



※後日談---学生時分、日本建築と西洋建築の比較文化についての講義で、森をすっかり切り払い、容易に朽ちない石やレンガを積み上げ、周囲に幾何学的な庭園を配置する西洋建築は、自然を「制覇」しそこに「君臨」する文化であり、自然の伐採を最小限にとどめて、朽ちやすい木や竹や紙や土などを使用し、周囲の自然に溶け込むようにつくられる日本建築は、自然そのものと「共存」しそこに「調和」する文化だと聞いた。ところが、そんな自然と「共存」「調和」する日本文化が崩壊したのは、つい近年のことだ。せめて、残された山は守りたい。

参考資料/協同組合倭人
     奈良県農林部林政課
用語解説/大辞林(三省堂)


home.html column10.html