■1. ハイテク企業、ローテク企業。
■2. コマンドZな電卓。
■3. キャラポンな製品。
■4. 他人の感覚で判断できる人、自分の感覚で判断する人。
■5. 自分の感覚でしか判断できない人。
■6. 経営者に求められる感性。
■7. 経営者と企画開発部。
■8. クレーマー、カスタマー。
■9. もっとも強いものづくり。
■10. 既存技術の融合。
■11. 要望のないアンケート。

■ラフィールドの考える「これからの企業と製品」をコラムシリーズとしてお伝えしていきます。
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■2. コマンドZな電卓。

計算機からスタートしたコンピュータ。いまやハイテクの最先端を担い、ムーアの法則(18カ月ごとに半導体の集積度は2倍になる)などと言うとんでもない速度で進化し続け、留まる所を知らないようだ。

一方、その原点である電卓は、どうしたことか、すっかり進化が止まってしまった。かつて、あまりにも薄く小さくなり過ぎ、かえって使いにくくなってしまったあたりから代わり映えしない。しかも今や、100円ショップで売られるありさまだ。ところが、この時代に取り残されたような電卓だが、決して侮(あなど)れたものではない。

私は、一日の大半をパソコンに向かって過ごすが、電卓をかなりの頻度で使う。パソコンに電卓機能が付いているにもかかわらずだ。単位の変換、サイズの比率、数値の概算など、早さを必要とする時は、やはり手元の電卓に限る。パソコンの電卓機能では使いづらい。もっとも、それこそ込み入った集計などはパソコンの方が圧倒的に有利だから、状況によって使い分けている。

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さて、このかつてハイテクだった電卓だが、ほんとうにもう進化する必要がないだろうか。ここで、ある面白いエピソードをご紹介する。彼は、若手の新進気鋭デザイナーである。その日も朝から忙しく、ソフトを幾つも立ち上げ、指先が見えないくらい早い速度のショートカット(短縮操作)で作業をしていた。おもむろに、こんどは電卓で何やら計算を始めた。しばらくすると、電卓の上で彼の手が右往左往している。何かを必死に探しているようだ。彼は私の側にやって来て、こう言った。「コマンドZが、ないんです。」

ご存じかも知れないが、デザイナーは作業を効率化するためにショートカットを多用する。コピー(複写)が「コマンドキー+Cキー」、セーブ(保存)が「コマンドキー+Sキー」、言語切替が「コマンドキー+スペースキー」と言う具合にだ。「コマンドZ」(コマンドキー+Zキー)とは、動作を取り消す(一つ前に戻る)ショートカットのことである。パソコンのメモリが許すなら、それこそ無限にさかのぼることが可能だ。この、パソコンのソフトには当たり前のように付いている機能が、電卓にないと言うのだ。

彼が日常扱うパソコンでは「コマンドZ」が幾らでも可能だから、気に入らなければ何度でもやり直すことができる。ところが、電卓では一つ前の数値すら見ることができない。これに彼は、愕然(がくぜん)とした訳だ。言われてみれば、なんでこんな簡単な機能がないんだろうと思えてくる。確かに、入力ミスをして一つ前に戻したかったことは多々ある。しかも、入力数が多い時ほど、最後に間違えることが多い傾向にあるようだ。

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電卓に「コマンドZ」の機能が簡単に付けられるかどうか分らないが、他であたりまえなことができないのは考えものだ。多くの道具や機器が進化し続ける中、電卓の進化を止めてしまっていいとは思えない。まずは、ユーザーの不満足に耳を傾けることが必要だ。



※後日談---別の日、たまたま彼が、コーヒーをこぼしてしまった時のことだ。すかさず彼の手が、「コマンドZ」のキーを探していたらしい。現実のやり直しは、キーではできなそうだ。


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